常識「今この世界を生きているあなたのためのサイエンス」

今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈1〉
今この世界を生きているあなたのためのサイエンス〈2〉
を読んだ。

テロリズム、エネルギー問題、原子力、地球温暖化など、問題の多くに科学が関わっている。著者はUC Berkeleyの物理の教授で、原著のタイトル”Physics for Future Presidents: The Science Behind the Headlines”が示すように、政治的な指導者が身につけておくべき、最低限の「使える科学的知識」を講義したもの。

人倫には逆らえても、物理には逆らえない。法理には逆らえても、物理には逆らえない。事実を知ることで、口先だけのうまい話にだまされないようにしたい。科学的知識がなければ、選挙で正しい選択をすることもできないのだから。

目次
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スリー・カップス・オブ・ティー

スリー・カップス・オブ・ティー

帯より。

2001年9月11日、アメリカで4機の旅客機が、次々とビルに激突、または墜落した。そのとき、”敵地”にいた一人のアメリカ人青年は、世界中の”大きな誤解”に気づいていた。

1993年、K2登頂に失敗したアメリカ人登山家グレッグは、パキスタンの山村で助けられる。それから彼はパキスタン、そしてアフガニスタンで学校を作ることになる。現地の文化を尊重しながら、イスラム教にもキリスト教にも西洋にも寄らない、中立の教育を子供に提供しようと奮闘する。サクセスストーリーでも自画自賛の物語でもない純粋なノンフィクション。

彼は言う。

善良な市民がいて、テロリストがいます。でもそのちがいは教育があるかどうかだけなんです。

無知は貧困を生む。貧困は歪んだ思想を生む。そして憎しみが生れる。

テロに打ち勝つ唯一の方法は、彼らに愛され、尊敬されること。そのたまにはまず彼らを愛し、尊敬することです。

隣人を愛せ。どの宗教にもある言葉。宗教どころか道徳、いや人の性質だろう。世界のかたちを知り、隣人を知るために教育はとても大切なものだ。

彼は現地で1万2千ドルで1つの学校を建てる。それは何世代にもわたって、何千何万もの子供に教育をほどこす。一方、9.11後の戦争で数百発も打たれた巡航ミサイルは1発84万ドル。それは学校を一瞬で灰にする。正しい選択をできるように、僕も学び続けよう。

この本はノンフィクションで内容も重い。でも次々と物語のような出来事が起こり、グレッグとそれに携わる人々は魅力的で、メッセージを受け取ると同時に楽しむこともできる。おすすめの一冊。

僕とパニック障害

僕はパニック障害(*1)かもしれない。

はじまり
2005年の秋、ある発作が頻繁に起きるようになった。これを言葉で説明するのは難しい。とにかく感情と情景が頭に溢れ動けなくなる。横断歩道を渡っている途中でも次の一歩が踏み出せなくなり、職場で人から声をかけられても反応することができなくなった。追い詰められて心療内科へ駆け込んだ。

その時、問診表の「特に困っている症状」欄に書いたこと。

  • 急に不思議な感情や情景がわく
  • 強い不安、恐怖
  • 動けなくなる
  • 過去に経験したように思うが、記憶と結びつかないので、とても混乱する

カウンセラーと30分、さらに先生も交えて30分のカウンセリング。病名は告げられなかったが、仕事の忙しさと睡眠に問題があると指摘された。抗うつ薬と睡眠薬が処方されたので、勝手に自分はウツになったのだと思った。意味も判らない病ではなく、確かに多忙な時期だったので、正直ほっとしたことを覚えている。

だが違和感もあった。発作への恐れから職場へ通い難くはなったが、無気力ではなかった。この頃は知人のベンチャーを起す手伝いをしており、自分自身も出資者の一人であったので、辛くても意欲的なつもりだったからだ。僕は本当にウツなのだろうかと。
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ハート・ロッカー

映画「ハート・ロッカー」公式サイト

あらすじ

2004年夏、イラク・バグダッド郊外。アメリカ軍爆発物処理班・ブラボー中隊のリーダーに、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)が就任する。まるで死への恐怖などないかのように遂行されるジェームズの爆発物処理の様子に、仲間のサンボーン軍曹(アンソニー・マッキー)らは不安を抱くようになり…

よくできたアメリカ視点の戦争映画。の一言。

例えば、「フルメタルジャケット」は訓練と戦場による人の「変化」を、「プラトーン」は密林での泥沼の「恐怖」を、「メンフィスベル」では戦場で芽生える「友情」を。この映画では、爆弾処理を中心に「緊張」を描いている。ストーリー性を極力排除し、現実味を追求することで、その緊張感を存分に伝える。

ちょっと面白く思ったのは、あまり反戦の訴えを感じないこと。極限の緊張は人を壊す、または虜にしてしまう。冒頭の「戦争は麻薬だ」という言葉がこの映画のテーマそのものなのか。

史上最低興行のアカデミー作品賞という話題性だけで観に行くのはあり。この緊張は劇場でぜひ。ただし「リアル」を売りにしているこの映画、PG-12 指定では少し甘いのでは?と思うシーンもあるので気をつけて。あと後半の夜のシーンは蛇足だと思う。Blu-ray は買わない。

最底辺の10億人/苦悩する大陸/世界の半分が飢える

貧困に関する本をまとめ読み。マジでキツカッタ。読むべき本。

最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?

良書。貧困の原因として4つの罠を挙げている。紛争、天然資源、内陸国であること、劣悪なガバナンス(統治)。援助資金や物資は、それを必要とする人へ届く前に武器となる。資源は軍資金に。何よりそれをする為政者の愚かさ。そして最大の障害は「先進国の無関心」だと著者はいう。

アフリカ 苦悩する大陸

良書。アフリカの今を教えてくれる。「なぜアフリカは貧しいのか?」その理由に歴史があるのは事実。植民地時代からはじまる貧困。人種差別、部族主義、呪術主義などの文化。蔓延する内戦、伝染病。その中で一番の理由、それは政府が無能であること。権力者がだめだめ。

世界の半分が飢えるのはなぜ?ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実

子供への語りかけのように飢餓問題を説く。その分、上記の2冊と比べて誤解を生みそうな部分もあった。やはりこの本でも「人為的」なものが原因だと言う。

100年予測

100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

これはスゴ本。内容は書名通り。地政学的視点から未来を読み解く。人口減や資源問題などの要素も織り交ぜ展開される予測は、説得力がありとても興味深い。(当然)根拠となるのは過去と現在なので、今の世界の形をおさらいすることもできる。固い頭をやわらかくできる。注意:あくまで予測。

折れそうな心の鍛え方

折れそうな心の鍛え方

著者がウツ(自己診断)と向かい合い自己流で克服した方法。著者が嫌いでなくて(笑)、今ウツの真っ只中でない人には、読む価値がある。予防の為、再発した場合に軽く済ませる為、何より世間に流されてウツと思い込まない為に。ただ日垣氏はやはり強い人だと思う。

世界を変えるデザイン

世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある

有名なのは、井戸で汲んだ水を何キロも歩いて家に運ぶ人々のために作られた、転がして楽に動かせるドーナツ型の容器。世界の90%の人々が僕らには当たり前の製品やサービスを知らない。その人たちの生活を改善する具体的なものがこの本には詰まっている。

そして世界に不確定性がもたらされた

そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命

1927年、若きドイツ人物理学者のハイゼンベルクは、量子力学の根幹をなす「不確定性原理」の考え方を初めて世に送り出した。すなわち、因果律に従い完璧に予測されるものだと考えられていた世界が、偶然と確率と可能性に支配された不正確なものに代わってしまったのである。これはあまりにも革新的な概念だった。当時すでに著名な科学者であったアインシュタインはこの原理を認めようとせず、また、ハイゼンベルクとその師ボーアとの間にも確執が生まれた。科学界だけではなく、文学や哲学にも大きな波紋をよんだ。だが、量子論と不確定性の考え方は、ある日突然現れたものではない。浮遊した微粒子がランダムに動くブラウン運動など、19世紀には不規則で統計的な現象の存在が明らかになっていた。また、第一次大戦後、敗戦国の屈辱を味わっていたドイツには、科学者の間にも決定論的な運命を認めたくないという向きが強まっていた。あとはただ一人の若き秀才の登場を待つのみだったのである。世界を揺さぶった不確定性の概念と、それをめぐる著名な科学者たちの人間ドラマとをみごとに描き出した、渾身の科学ノンフィクション。

失われた私

失われた私(多重人格シビルの記録)

「17人のわたし」の感想のコメントで知った本。いわゆる多重人格もの。ダニエル・キイスの「24人のビリー・ミリガン」よりも刊行が古い。

16の人格を持つ解離性同一性障害の女性シビルの生涯を描いた一冊。小説の形をとるが、実在する女性を診療した精神分析医の手配から著者が書き起こしているので、ノンフィクションである。

たいへんにドラマティック。他の人格を拒否していたシビルが、やがてそれらを受け入れ、統合へ歩を進める様子は感動的。治療を終えたシビルが、自らの苦難を振り返り、決してそれを否定していないことに私は深く心を動かされた。